太極拳を毎朝の日課にしていた75歳の母が、脳卒中で入院したと近所の方から連絡をもらい、長野県まで帰省した際の花子さんのお話です。

1人暮らしだし、娘には面倒をかけたくないと言っていた母が、医療保険に加入したことを思い出しました。

やっと保険証券を発見でき、入院給付金の書類をもらうためにカスタマーセンターへ電話をしました。

カスタマーセンターの女性Aさん:「お電話口は、ご契約者様ご本人ですか」
花子さん:「いえ、母はいま入院中なので、長女の私が代わりに電話しています」

カスタマーセンターの女性Aさん:「お母さまのご契約には、指定代理請求人のお手続きがされていません」
花子さん:「してい?指定代理なんとかが、ないと、どうなるのですか」

カスタマーセンターの女性Aさん:「はい、ご契約者のお母さまから、お電話をいただかないとお手続きはできません」
花子さん:「今、緊急手術をして意識が戻らず、自分で電話できる状況ではないのですけど、それでもダメですか」

結局、花子さんの目的は達成できませんでした。

実は、このようなお話はよくあります。

夫の契約を妻が電話をしても、お手続きはできない。
思い当たる方も多いのではないでしょうか。

たとえば、
介護施設入居のために契約者貸付を利用したくても、契約者が認知症を発症していた場合も、手続きができません。

上記のようなケースでも、あらかじめ「指定代理請求人」が指定されていれば、解決できます。

これが、まず、一つ目の制度です。

指定代理請求制度とは?

「指定代理請求制度」は、被保険者本人が、特別な事情により保険金等を請求できない場合に、あらかじめ契約者が指定した代理人が代わって請求できる制度です。

この制度を活用することで、給付金や保険金の受け取りがスムーズです。

例えば、こんなケース
母が脳梗塞を発症し、入院することに。
70代の母は、医療保険に加入済み。
脳梗塞が原因で認知症が進行し、病名・入院先を正しく伝えることができなくなっていました。

あらかじめ「指定代理請求人」として登録していた娘が、母の代わりに給付金の請求を行い、
医療費の一部をまかなうことができました。

指定代理人にできる人とその役割

指定代理人になれるのは、通常、三親等以内の親族(配偶者、子、兄弟姉妹、孫など)です。

代理人ができることは、
• 給付金・保険金の請求
• 医師の診断書など必要書類の提出 です。

契約者代理人制度との違い

混同されがちですが、
二つ目の制度が、「契約者代理人制度」です。

これは以下のような違いがあります。

区分 指定代理請求制度 契約者代理人制度
対象者 被保険者 契約者
目的 給付金・保険金の請求 契約内容の管理
手続きできること  給付請求、必要書類の提出 解約、契約者貸付、住所変更など
活用場面 被保険者が意思表示できない  契約者が認知症などで判断不能

例えば、契約者代理制度利用のこんなケース
契約者が認知症に
夫が契約者となっていた医療保険。

高齢になり認知症を発症し現金が必要になったとき、妻が「契約者代理人」として登録されていたことで、スムーズに解約手続きを行えました。

請求手続きを代行できるのか、契約の管理を代行できるのかが、上記の二つの制度の違いです。

家族登録制度とは?

最後に、3つ目の制度です。
「家族登録制度」は、保険契約に関する情報提供や連絡が必要になった際に、あらかじめ登録した家族宛に連絡が届く制度です。

これは、被保険者や契約者が連絡不能の状態になった場合の「連絡手段の保険」として有効です。

3つの制度を使う前に(注意点)

● 信頼できる人を選ぶこと
代理人をめぐるトラブル(勝手な請求、誤請求など)を防ぐためにも、家族間でしっかり話し合っておくことが重要です。

● 制度の内容は保険会社によって異なる
担当者がいれば担当者へご確認ください。

最後に

「万が一」に備える保険ですが、請求手続きも“備え”が必要です。

本人が意思表示できなくなることは、現実に起こりうることです。
そのとき、あらかじめ指定した代理人がいれば、保険の「使える仕組み」が機能します。

こうした制度を知っているかどうかで、家族の安心感も大きく変わりますよね。

大切なのは、元気なうちに、家族と話して準備しておくこと。
これこそが、保険を活かす最も大切な一歩です。