実家の父親が亡くなりました。
兄妹は3人です。実家には80代の母親も住んでいます。相続税はかかりません。

父親名義の実家の土地や建物について、手続きが必要ですか?

はい。必要です。

今までは、祖父の名義のままで、父親が亡くなった場合でも、名義変更がなされていなくても特段ペナルティはありませんでした。

来年2024年4月からは、いままでのようには行きません。
相続人申告登記が義務化されます。

相続人登記
相続登記と違うのか?なんじゃ、それは?
あっ失礼。ついオジーちゃん口調になってしまいました。

相続人申告登記とは?

登記簿上の所有者について、「相続が開始したこと」と「自らがその相続人であること」を申し出る制度です。

この申出がされると、申出をした相続人の氏名・住所等が登記されますが、持分までは登記されません。

(*権利の取得を公示するものではないため、これまでの相続登記とは性質が異なります。)

新たな制度がつくられた背景は?

名義変更や所有者の住所変更をしていないと、所有者不明の土地が増殖してしまいます。

国として、自分の不動産をきちんと管理して欲しいからです。
処分できない。。。だから、管理しない廃墟のような不動産が増えています。

市役所が、道路を拡張したい。
しかし、廃墟のような家の立ち退きが完了していないために、道路がまっすぐではなく、
L字型に曲がった道路があるなど、ニュースで見たことはありませんか。

現行の制度だけでは、
相続登記する場合には、法定相続人の範囲及び法定相続分の割合の確定が必要です。

被相続人の出生から死亡に至るまでの戸除籍謄本等を準備するが大変です。
専門家の力を借りずに行うには、大変な労力が要りますね。

相続人が申請義務を簡易に履行することができるようにする観点から、新たな登記を設けられることになりました。

どういう制度?

不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられます。

○ 正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料があります。

➡素朴な疑問ですが、どうやって10万円を徴収するのでしょうか。
どうやって罰金を取る人を確定するのか。

○ 相続発生後は、遺産分割するまで全ての相続人が法定相続分の割合で不動産を取得(共有)した状態となる。

➡相続したことも知らない状態で、相続する権利者が膨大な数になって、そのままにしたくなる気持ちも理解できます。

手続き的には、
①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、

②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで、
申請義務を履行したものとみなされます。

相続登記というと

①遺言書があって、山田一郎がA土地を相続するなどの遺言書がある場合

②相続人で話し合って、山田花子がB土地を取得することで協議ができた場合

③兄妹で1/2ずつの共有にすることで分割協議ができた場合
に相続登記をします。

分かり易くいうと、
この不動産の所有者が誰で、持ち分が全部なのか半分なのかなどを、第三者の他人にも一目でわかるようにすることです。

相続人登記の制度では、
誰が、A土地を取得するか決まっていない状態で、相続人全員の共有状態をそのまま反映することになります。

現状では、法定相続分での相続登記はしないことが殆どです。
法務局での手数料も専門家へ依頼する報酬も発生するためです。

2024年4月からは、
分割でもめているとか、分割の予定がない等の場合は、相続人申告登記を相続開始日から3年以内に申し出ることになります。

その後、遺産分割協議がまとまったら、持ち分を記載する相続登記を3年以内することになります。

相続人登記は義務だけど、デメリットはある?

この制度を知らない相続人は、勝手に名義変更したと怒り出すでしょう。

素人の私たちは、名前の記載があるだけで、勝手に名義変更したと思い込んでしまいます。

分割協議が泥沼化することは容易に想像できますね。
登記簿に記載のある人に、地方自治体から固定資産税の請求がくるかもしれません。

すぐに相続登記できないときのための相続人申告登記制度です。

例えば、
相続人が3人の場合、1人が申し出したとしても、他の2人は履行したことになっていないので、
過料(10万円)の対象です。

今日のまとめ

今回、紹介している相続人申告ではなく、正式な相続登記にすべきです。

相続開始時から3年以内の期限なら分割協議を終わらせる時間はあります。

相続税の申告期限は10か月以内。
相続税法的には、分割協議が終わらないと様々な優遇措置は受けられません。

今回ご紹介している制度は、とりあえずの制度と思いましょう。
分割がスムーズにいくのであれば、二度手間になります。

相続人登記の制度は、過去に相続したものであっても相続登記が未了の不動産にも適用されます。
義務です。結構厳しい制度です。

相続する権利があると知りましたが、不要な土地を処分したくても、亡くなった人のままの土地家屋は、売却できません。

ですから、今のうちから準備が必要です。
疑問や不安がある方は、専門家に早めに相談をしましょう。
不動産を遺す側も引継ぎ側も、この改正点を踏まえて、早めの対策をお勧めします。

売却しずらい不動産をうまく分割させるには、処分が難しい土地の管理処分代として金銭も準備することも大事です。
なぜなら、遺産分割協議がスムーズに進むことが多いからです。

不動産を負動産としないために、生前から「しまい方」を考えておくことが”子孝行”になるかもしれません。