
親世代の方とお話ししていると、皆さん口を揃えてこうおっしゃいます。
「私の財産は、死んだら子供たちできっちりと等分してくれればいい」
親心としては非常に納得できる言葉ですが、
実はこれ、相続においてトラブルを招く「絶対にアカンやつ」になり得るのをご存知でしょうか?
親の「平等」と子の「現実」にはズレがあるから
親はなぜ「等分でいい」と言うのでしょうか。
その背景には、いくつもの親心があります。
まず、「子どもはみんな平等」という強い価値観です。
誰か一人だけを特別扱いすることは、自分の愛情に差があるように見えてしまう――そう感じる方は少なくありません。
また、「公平に分けることが愛情の証明になる」と考えている方も多いです。
財産の分け方で子ども同士の関係が壊れるくらいなら、最初から平等にしておきたい。そんな思いです。
さらに、「争いを避けたい」という現実的な理由もあります。
誰かを多くすれば、「なぜあの人だけ?」という不満が必ず出る。
だからこそ“等分”という分かりやすいルールに安心感を求めるのです。
そして、もう一つは、「角を立てたくない」という日本的な感覚です。
はっきり差をつけるよりも、無難で波風の立たない方法を選びたい。
このように、「等分」はとても合理的で、優しさにあふれた考え方でもあるのです。
それは、子供は皆平等であり、愛情の証明としてわだかまりを残したくないからです。
「法律で決まっているし、誰かを多くすると角が立って争いになる」と考えるのも当然でしょう。
しかし、実際の介護をしてきた子供の言い分は違います。
介護費用は子が思う以上にかかるものです。
兄弟間での介護の負担は決して「等分」ではないからです。
介護の現場は想像以上に過酷
現実の相続では、この“優しい平等”が思わぬズレを生みます。
特に大きいのが、介護をめぐる問題です。
親の介護を担ってきた子どもは、想像以上の負担を背負っています。
通院の付き添いは平日が基本で、仕事を休まなければならないことも多いでしょう。
ケアマネジャーとの打ち合わせや各種手続きも、時間と手間がかかります。
病院の待合室を見渡すと、付き添いの方が時計を気にしながらイライラしている光景も珍しくありません。
「早くしてほしい、仕事に戻らないといけない」――そんな切実な声が聞こえてくることもあります。
それほどまでに、介護を担うご家族は時間的・精神的に追い詰められ、イライラを抱えています。
本当にお疲れ様です、と心から思います
一方で、親と離れて暮らしている子どもは、その現実を肌で感じる機会が少なくなりがちです。
頭では理解していても、日々の積み重ねまでは想像しにくいものです。
その結果、「同じ子どもなのだから同じ取り分で当然」という意識と、
「自分はここまでやってきたのに」という思いの間に、大きなギャップが生まれます。
このギャップこそが、相続トラブルの火種になります。
「私が死んだら好きにして」と放置してしまったら…
もし、親が「私が死んだら好きにして」と何も対策をせずに亡くなってしまったらどうなるでしょうか。
特に、金融資産のように簡単に分けられない「不動産」のウエートが大きい場合は悲惨です。
現金であれば、1円単位で分けることができます。
しかし、不動産はそうはいきませんね。
「実家をどうするのか」
「誰が住むのか」
「売るのか、そのままにするのか」
この時点で意見が分かれやすくなります。
さらに、「自分が死んだら好きにしていい」という言葉を残してしまうと、
一見自由に見えて、実は“丸投げ”になってしまいます。
判断基準がないまま話し合いをすると、
・感情論になる
・過去の不満が蒸し返される
・話し合いが長期化する
といった状況に陥りやすくなります。
また、法律上は「遺留分」(※法律上、相続人に最低限保障された財産のこと)という最低限の取り分も保証されています。
そのため、たとえ遺言で差をつけたとしても、後から請求が起きる可能性があります。
つまり、「何も決めないこと」が一番リスクになるのです。
親が良かれと思った「等分」が、結果的に一番避けたかった「子供同士のわだかまり」を生んでしまうのです。
生前の「4つの対策」で争族を防ぐ
親の財産は、あくまで親自身のものです。
だからこそ、「どう残すか」まで責任を持って設計することが大切です
だからこそ、財産がある・ないに関わらず、遺言書をはじめとする事前の対策が必須です。
あなたがすべき4か条をお伝えします。
1. 財産の「見える化」(財産目録の作成)
まずは現状把握から。何をどれくらい持っているのかを整理しましょう。
2. 分けにくい財産の処遇を決める
不動産などは以下の方法で分ける準備をします。
• 換価分割:売却して現金を等分で(1円単位で)分ける方法。
• 代償分割:一人が不動産を相続し、もう一人に代償として現金を払う方法。
3. 遺言書を書く(付言事項に思いを込める)
誰に何を渡すか指定するとともに、「なぜそう分けたのか」という親の思いを「付言事項」
として記すことで、子供たちの納得感が大きく変わります。
4. 取得財産のバランスをとるために「生命保険」を活用する
分けにくい不動産しかない場合など、代償分割の「お金を準備する」手段として
生命保険は非常に有効です。
保険を活用するメリット
o 受取人を指定し、「お金に名前をつけて」確実に渡すことができる。
o 相続税の納税資金の準備ができる。
o 「500万円 × 法定相続人の数」という相続税の非課税枠が使える。
今日のまとめ
「きっちり等分」という言葉の裏には、親の深い愛情があります。
しかし、その愛情を本当の意味で子供たちに平和に届けるためには、現実に即した準備が必要です。
本当に大切なのは“結果の平等”ではなく“納得のある分け方”です。
そのための準備こそが、家族への最後の思いやりになるのではないでしょうか。
今日から少しずつ、ご自身の財産の整理と対策を始めてみませんか?

